2ちゃんねる ★スマホ版★ ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50  

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

◇◆◇◆有閑倶楽部を妄想で語ろう21◇◆◇◆

1 :名無し草:04/05/13 18:56
ここは一条ゆかり先生の「有閑倶楽部」が好きな人のためのスレッドです。
 前スレ http://etc.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1080645816/

お約束
 ■sage推奨 〜メール欄に半角文字で「sage」と入力〜
 ■妄想意欲に水を差すような発言は控えましょう
*作品への感想は大歓迎です。作家さんたちの原動力になり、スレも華やぎます。

関連サイト、お約束詳細などは>>2-10の辺りにありますので、ご覧ください。
特に初心者さんは熟読のこと!

2 :名無し草:04/05/13 18:57
◎関連スレ「まゆこ」
 http://etc.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1028904997/21-n
 意見交換や議論をする時に使うスレです。テンプレ相談などはこちらで。

◎関連サイト「有閑倶楽部 妄想同好会」 http://houka5.com/yuukan/
 ここで出た話をネタ別にまとめてくださっているところです。
 古いスレのログも置いてあります。

◎関連BBS「妄想同好会BBS」 http://jbbs.shitaraba.com/movie/1322/
 「有閑倶楽部 妄想同好会」の専用BBSです。
 本スレに作品をUPしにくい時のUP用のスレなどがあります。

◎関連絵板「■ □ ■ 妄想同好会 絵板 ■ □ ■」
 http://www8.oekakibbs.com/bbs/loveyuukan/oekakibbs.cgi
 「有閑倶楽部 妄想同好会」の専用絵板です。イラストなどがUPできます。

◎関連スレ「有閑倶楽部アンケート スレッド」
 http://jbbs.shitaraba.com/movie/bbs/read.cgi?BBS=1322&KEY=1077556851
 「有閑倶楽部 妄想同好会」内のスレッドです。ゲストブック代わりにドゾー。

3 :名無し草:04/05/13 18:57
◆作品UPについてのお約束詳細(よく読んだ上で参加のこと!)

<原作者及び出版元とは全く関係ありません>

・初めから判ってる場合は、初回UPの時に長編/短編の区分を書いてください。

・名前欄には「タイトル」「通しナンバー」「カップリング(ネタばれになる場合を
 除く)」をお願いします。

・性的内容を含むものは「18禁」又は「R」と明記してください。

・連載ものの場合は、二回目以降、最初のレスに「>○○(全て半角文字)」
 という形で前作へのリンクを貼ってください。

・リレー小説で次の人に連載をバトンタッチしたい場合は、その旨明記を。

・作品UPする時は、直前に更新ボタンを押して、他の作品がUP中でないか
 確かめましょう。重なってしまった場合は、先の書き込みを優先で。

・作品の大量UPは大歓迎です!

4 :名無し草:04/05/13 18:58
◆その他のお約束詳細

・無用な議論を避けるため、萌えないカップリング話やキャラ話であっても、
 それを批判するなどの妄想意欲に水を差す発言は控えましょう。

・作家さんが他の作品の感想を書く時は、名無しの人たちも参加しやすい
 ように、なるべく名無しで(作家であることが分からないような書き方で)
 お願いします。

・あとは常識的マナーの範囲で、萌え話・小ネタ発表・雑談など自由に
 お使いください。

・950を踏んだ人は新スレを立ててください(450KBを越えた場合は早めに
 スレ立て準備をして、485KB位で新スレを。500KBで投稿できなくなります)。
 他スレの迷惑にならないよう、新スレの1は10行以内でお願いします。

5 :名無し草:04/05/13 18:59
◆初心者さんへ

○2ちゃんねるには独特のルール・用語がありますので、予習をお願いします。
 「2ちゃんねる用語解説」http://www.skipup.com/~niwatori/yougo/

○もっと詳しく知りたい時
 「2典Plus」http://www.media-k.co.jp/jiten/
 「2ちゃんねるガイド」http://www.2ch.net/guide/faq.html

○荒らし・煽りについて
・時々、荒らしや煽りが現れるかもしれませんが、レスせずスルーしてください。
 指差し確認(*)も無しでお願いします。
 *「△△はアオラーだからスルーしましょう」などの確認レスをつけること

・荒らし・アオラーは常に誰かの反応を待っています。反撃は最も喜びますので、
 やらないようにしてください。

・放置されると、煽りや自作自演であなたのレスを誘い出す可能性があります。
 乗せられてレスしたら、その時点であなたの負けです。くれぐれもご注意を。

・どうしてもスルーできそうにない時は、このスレでコソーリ呟きましょう。
 「■才殳げまιょぅ■タロ無し草@灘民【3】」(通称:ちゃぶ台スレ)
 http://etc.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1032266474/l50
 (注)有閑スレのことだとバレないように呟いてください
   このスレで他の人のレスに絡んだり、このスレのログを他スレに
   転載したりは、しないでください。

○誘い受けについて
・有閑スレでは、同情をひくことを期待しているように見えるレスの
 ことを誘い受けレスとして嫌う傾向にありますので、ご注意を。
 語源などの説明はこちら
 http://etc.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1028904997/172

6 :名無し草:04/05/13 18:59
◆「SSスレッドのガイドライン」の有閑スレバージョン

<作家さんと読者の良い関係を築く為の、読者サイドの鉄則>
・作家さんが現れたら、まずはとりあえず誉める。どこが良かったとかの
 感想も付け加えてみよう。
・上手くいけば作家さんは次回も気分良くウプ、住人も作品が読めて双方ハッピー。
・それを見て自分も、と思う新米作家さんが現れたら、スレ繁栄の良循環。
・投稿がしばらく途絶えた時は、妄想雑談などをして気長に保守。
・住民同士の争いは作家さんの意欲を減退させるので、マターリを大切に。

<これから作家(職人)になろうと思う人達へ>
・まずは過去ログをチェック、現行スレを一通り読んでおくのは基本中の基本。
・最低限、スレ冒頭の「作品UPについてのお約束詳細」は押さえておこう。
・下手に慣れ合いを求めず、ある程度のネタを用意してからウプしてみよう。
・感想レスが無いと継続意欲が沸かないかもしれないが、宣伝や構って臭を
 嫌う人も多いのであくまでも控え目に。
・作家なら作品で勝負。言い訳や言い逃れを書く暇があれば、自分の腕を磨こう。
・扇りはあまり気にしない。ただし自分の振る舞いに無頓着になるのは厳禁。
 レスする時は一語一句まで気を配ろう。
・あくまでも謙虚に。叩かれ難いし、叩かれた時の擁護も多くなる。
・煽られても、興奮してレスしたり自演したりwする前に、お茶でも飲んで頭を
 冷やしてスレを読み返してみよう。
 扇りだと思っていたのが、実は粗く書かれた感想だったりするかもしれない。
・そして自分の過ちだと思ったら、素直に謝ろう。それで何を損する事がある?
 目指すのは神職人・神スレであって、議論厨・糞スレでは無いのだろう?

7 :名無し草:04/05/13 19:01
テンプレは以上です。

前スレの残りは感想と雑談に使って、競作などの作品ウプは
こちらにドゾー。

8 :名無し草:04/05/13 19:07
新スレ乙。
このスレもまたーり萌えできますように。

>ダンデライオン
タイトルの意味が分からないけど、
野梨子の葛藤がよく分かりました。
清四郎、罪作り……。

9 :名無し草:04/05/13 19:12
スレたて乙です。

>8
ダンデライオン=たんぽぽ ですよ。

>ダンデライオン
野梨子の微妙な心理描写がいいですね。
嫉妬よりもああいう方向に思考が向くあたり、野梨子らしくて好きでした。

10 :名無し草:04/05/13 19:21
>たんぽぽ
なるほど!
無知な自分に教えてくれてありがとよ

11 :名無し草:04/05/13 19:55
スレたて乙です!
ユーミンの歌でありましたね>ダンデライオン

12 :名無し草:04/05/13 20:25
>11
私も思った。<ユーミンの歌
静謐な雰囲気が似てるかなって。
歌詞はお話の内容とは全然違うけど、(10)で野梨子が悠理のことを
考えているところは「今、素敵なレディになる」の下りを連想した。

13 :名無し草:04/05/13 21:08
私はブランキーを思い出した。<ダンデライオン

>ダンデライオン
めちゃめちゃ好きなお話でしたー!
べったりとした白い汁で象徴される野梨子の心情も、
その思いの拠点として活かされてる倶楽部の人間関係も。
ただ嫉妬して憎いって言うんじゃないのがいいなぁ。
野梨子の潔い清さとか、悠理の伸びやかな煌きとか、
すごく愛を感じました。ほんと良かったです。

14 :名無し草:04/05/13 21:59
新スレ立て乙です。競作参加します。
4レスいただきます。


15 :20万hit競作 I wish …(1)野梨子:04/05/13 22:00
私は買い物の途中、何と無く紅い林檎が目に入った。
ふっとあることを思い出す。

「両思いになれますように」と心で唱えながら、皮を剥き、煮詰めて、林檎のジャムを作る。使う林檎は赤いもの。
好きな人にそれを食べてもらえば、想いが伝わる。
確かそんなおまじない。
ヨーロッパでは、林檎は恋のおまじないによく登場する。

オーブンからスコーンの焼きあがる香りが立つ。
私は火にかけた鍋から、色が無くなった林檎の皮を取り出す。
砂糖を入れて、私の気持ちも一緒に煮詰めていく。
私の心と同じ、甘酸っぱい林檎ジャムの出来上がり。
彼の髪と同じ、ピンク色の林檎ジャム。


16 :20万hit競作 I wish…(2)野梨子:04/05/13 22:01
生徒会室で五人を待ちながら、スコーンとジャムと紅茶を準備する。
こんなことで想いが伝わるなら、世の中皆幸せですわね。
自分でもおかしいと思うけれど……。
今はまだ、自分の気持ちを彼に伝える勇気がないんですもの。

生徒会室に皆が揃い、取り留めのない話が始まる。
「魅録の分も頂戴!」悠理の手が勢いよく、ピンクのジャムがのった魅録のスコーンへ伸びる。
「悠理、だめですわ!」私は思わず立ち上がり、叫んでいた。
五人の視線を感じ、気恥ずかしく椅子に戻る。
「皆さんに食べて戴きたくて…。数も少ないですし。悠理には私の分を差し上げますわ。」とその場を取り繕った。

ごめんなさいね、悠理。
魅録が食べてくれないと、作った意味がありませんのよ……。
心のどこかで、おまじないを信じる私。
もし、魅録がそれを口にしたら。
そうしたら、私も心を決めますわ…。
だからどうか、友達思いの彼がいつものように、自分の分も悠理にあげたりしませんように。


17 :20万hit競作 I wish…(3)可憐:04/05/13 22:04
桜が散り、葉桜の季節。
人生最大のイベントに向けて、私は毎日忙しい。
もうすぐ私の結婚式。

招待客への挨拶や、ショッピング、ドレスのサイズ直し、エステ。
忙しいけど、不思議と苦にならない。
お肌の調子もいいし、自分でも耀いているって思う。

そんなある日。
美童から結婚祝いが届いた。
何が入ってるのかしら?楽しみに箱を開ける。
そこには―白いレースにブルーのリボンと花飾り―
ガーターが入っていた。
美童ったら一体どういうつもり?男からのプレゼントにしては意味深よね?
これから嫁ぐ女をくどく気?

添えられたカードには、
 ― 可憐の玉の輿に乾杯!
   本当は可憐のことちょっと好きだったんだ。
   サムシング・ブルーに使ってくれたら嬉しいな。
                      美童―
と書かれていた。

ランジェリーショップで、ガーターを選ぶ美童を想像し、おかしくなった。
そして少しだけ、寂しくなって涙が出た。
「ちょっと好き」って、何よ…。


18 :20万hit競作 I wish…(4)可憐:04/05/13 22:05
もちろん私は抜かりなく、四つの「サムシング」を準備していた。
サムシング・ブルーは、マリッジリングの内側にサファイヤを秘めてもらって。
だけど、美童の気持ちが嬉しくて彼の期待に応えることにした。

旧伯爵邸での結婚式。
お天気も良くて、広い庭の芝生の緑に、私のドレスの白がよく映える。
神聖な誓いの言葉を交わし、にぎやかなパーティーへと移る。
わたしは仲間の下へ急ぐ。
私の頬に美童が軽くキスをし、「可憐とっても綺麗」と耳元で囁いた。
「美童、あんたにも幸せを分けてあげる。」
私は意味ありげにウィンクを残し美童の傍を離れた。

パーティーの最後。
私は夫となる人に予定外のお願いをした。
それは、ガータートス。
ブーケトスの男性版。

早く美童にも本当に大切な人が見つかりますように。
私は心から、願ってる。
だから美童、ちゃんとガーターをキャッチしてね!

End



19 :20万hit競作 I wish…:04/05/13 22:05
以上です。悠理編お待ちだった方、すみません。
彼女のおまじないは「色」が絡まないのでまた今度。


20 :名無し草:04/05/13 22:51
滑り込みでうpさせて頂きます。一応9レスで収まる予定です。長文が多く、必死でシェイプしたのですが、
もしかしたら10レスを超えてしまうかもしれません。もしも超えてしまったらごめんなさい(大汗
清×野です。嫌いな方、スルーお願いします。


21 :20万hit競作・Blue sky (1):04/05/13 22:54
あの日、列車に飛び乗ってから、何度も乗り継ぎを繰り返してここまで来た。
ここがなんと言う名前の土地なのか、そしてあの懐かしい東京――彼女が愛しい人々と、まるで砂糖菓子のように、
甘く幸福な日々を送っていたあの街――からどれくらい離れているのかも判らない。
とうとう行き止まったのは島国ならば当然の海辺の町で、けれどどこにいても落ち着かずに、
ホテルや民宿を転々としながら海沿いを行くあてもなく彷徨っている。
こんなシーズンオフにたった一人で宿を求める軽装の少女は、どこにおいても不信の目で見られ、
だからというわけではないが、彼女が落ち着ける場所はどこにもなかった。
居場所を見失い彷徨い続ける少女―――野梨子は楽園を追われた放浪者だった。

だが、そんな彼女にも、少しだけ楽になれる時間というものがあった。
それは夜明け前の日が昇る直前。
今の彼女にとっては明るすぎる太陽が、その輝く姿をあらわす前の、青く澄んだ時間帯。
ようやく彼女は、そこで深い息を吸うことが出来る。
人影はなく、世界は静寂に包まれて、ここには私と、冴え冴えとした青い空があるだけ。
彼女は思う、いつからこうしているのだろうと。
野梨子は、あの日からすでに幾日が過ぎたのかも判らなかった。
野梨子はどこにもいけない怯えた逃亡者だった。

22 :20万hit競作・Blue sky (2):04/05/13 22:57
「愛してます、野梨子」
清四郎にそう告げられたのは、心配していた悠理がぎりぎり滑り込みで必要単位を取得した、
すなわち仲間全員が聖プレジデント大学二回生に上がることが決定した記念すべき日だった。
お祝いのあと、いつものようにみんなと別れて、野梨子と清四郎は二人で一緒に帰った。清四郎はいつもより口数が少なかったけれど、
それ以外に特に変わった素振りは見せなかった。
家の前まできて、野梨子は清四郎を振り返った。その時もまだ野梨子は、今日という日が明日もまた同じように続くと当たり前のように信じていた。
野梨子はいつものように「清四郎、また明日」と、そう言った。
にこやかに隣を見上げて、彼女が昔から最も信頼する親友が「また明日」と言ってくれるのを待っていた。
昨日と今日が同じならば清四郎もまた「明日」と言ってくれるはずだった。なのに――。
「愛してます、野梨子。ずっと言えませんでした。でも、もうこれ以上、僕の胸に止めておくことは出来ないんです」
言葉の意味を理解した時、野梨子はぐらりと地面が揺れた気がした。立っている場所が崩れて、体が下に落ちていくような感覚。
不思議なことに、急にひとりぼっちになった気がした。

23 :20万hit競作・Blue sky (3):04/05/13 22:59
野梨子は一言もそれに対して返すことが出来なかった。
恥らうことはおろか、喜ぶことも、悲しむこと、怒ることも何も出来ずに、ただ黙って清四郎を見つめていた。私の顔はきっと蒼白だったのだろう、今になって野梨子は思う。
清四郎は不安そうに私の名を呼んだ。野梨子、と、生まれてからこれまで耳にした数え切れない呼び声の中でも、今まで聞いたことが無いくらい哀しい声だった。
なのに私はやっぱり何も言うことが出来なかった。もしかしたら私の目からは涙が流れていたのかも知れない。
清四郎は手を伸ばして、私の頬に触れた。とても優しい感触だったのに、それでも私はやっぱり何も言うことが出来なかった。
そうして長いこと二人は佇んでいた。
やがて耐え切れなくなった清四郎が野梨子の名を呼び、体を引き寄せた。
それは野梨子のよく知る幼馴染ではなく、彼女の知らないひとりの男性だった。「いやっ!」反射的に野梨子は叫ぶと、清四郎の腕を逃れて、家の中に駆け込んだ。
あの日、野梨子はもっとも大切な友達をなくしたのだ。
そしてそれと共に、絶妙のバランスで繋がりあった愛しい仲間をも失ったのだ。
もう、あの関係には戻れない。
野梨子が何よりも守りたかった、かけがえのない世界は崩壊した。
野梨子はその日のうちに、家を飛び出した。

…清四郎、どうして、あんなことを言いましたの?

今さら清四郎とどんな顔をして会えばいいのかもわからず、また、東京に戻って、これから少しずつ変わっていくだろう仲間達との関係を見届ける勇気もなくて、
野梨子はあちらこちらを彷徨いながら、じりじりと時間稼ぎをするように毎日を過ごしていた。
そしてどこにいても明け方になると外にでて、じっと澄んだ空を見つめ続けた。

24 :20万hit競作・Blue sky (4):04/05/13 23:02
その日野梨子はいつもより早めに外へ出た。
夜の気配はまだ濃厚で、夜明けまではまだ時間がありそうだった。野梨子は浜辺へと続く階段の途中に腰をおろして、夜が明けるのを待つことにした。
目の前に広がっているはずの広大な海も、今は暗くてなにも見えない。暗闇から聞こえてくる波の音は人の心を不安にさせるものがあり、
飲み込まれそうな漆黒の闇から逃れるように、野梨子は頭上を見上げた。都会の夜とは違って、空は塗りつぶしたような黒ではなくて、
満天の星々が瞬いていた。膝を抱えてぼんやりと、降るような星空を眺めていると、まるで眩暈がするようだ。
明るい星の光に野梨子は目を瞬いた。そして彼女は以前にもこうやって、浜辺で何かを待っていた自分のことを思い出した。

あの日、みんなが時宗さんに千秋さんとの約束を果たさせたくて必死だった。
野梨子はひとりではなかった。隣には可憐がいてくれたし、島の反対側を目指したメンバーも、今は側にいないというだけで、
その存在を感じとることができた。あの時も私は浜辺で待っていたんだわ。野梨子の意識は次第に時間を遡りはじめた。
彼らの道行きが少しでも楽なものになるように、私は星がもっと輝けばいいと願っていた。時間の流れはひどくゆっくりで、
彼らは必ず迎えに来てくれると信じていたけれど、それでもあまりにも遅すぎる待ち人は次第に私を不安にさせた。あの時も潮騒は私を怖がらすかのように響いていた。
夜が更けるにつれて拭えない心細さが募り、可憐がいなければとても耐えられはしなかった。時間感覚が麻痺して、いつからここでこうしているのか、
段々わからなくなっていた。闇は深く、永遠に明けることなどないように思え、私達はみんな、いつの間にかメビウスの環に絡め取られてしまったのかもしれない、
そんな子供じみた想像からなかなか抜け出すことができなかった。
もしも、もう2度と会えなくなったらどうしよう?ほんのさっき別れた皆が懐かしくて仕方なかった。

――みんな今頃、何処にいますの?
――清四郎、早く。早く、迎えにきて。


25 :20万hit競作・Blue sky (5):04/05/13 23:04
いつのまにか星がひとつ、またひとつと姿を消しはじめていた。夜明けの始まりだった。
夜空がほんの少しずつ黒から群青へと色を変えていく。
目前ではちらちら踊る白い筋がうっすらと浮かび上がった。それが波の先端だとわかるまでそんなに時間はいらなかった。
それを皮切に風景が次第にその姿を現しはじめた。まるで単色画のような世界。そこに使われている色は、よどみなく澄んだブルー。

ぴんと張り詰めた空気を破って、轟音をまき散らしながら、魅録と清四郎を乗せたモーターボートが到着したのは、まさにそんな時間帯だった。
「悪いな、こんな所で夜明かしさせちまって」魅録はすまなそうに何度も謝った。
「おじさんは無事に花束を渡せましたよ。おはよう、清々しいイヴの朝ですね」
それとは引き替えに、現れた清四郎は笑顔さえも浮かべていた。
どこが清々しいのよ!!清四郎の態度の悪さに可憐が怒鳴る。あまりの悪びれない台詞には野梨子も憤慨して、可憐が苦情を言い終えた後には、
自分も何か一言いってやるつもりで言葉を探した。可憐の文句を背中で受けながら清四郎は野梨子の手を取ると、彼女を助け起こして、
野梨子もかなりご立腹ですね、と笑って言った。野梨子は当たり前ですわと怒って答えた。

26 :20万hit競作・Blue sky (6):04/05/13 23:07
野梨子が立ち上がっても清四郎はそのまま手を放さなかった。不思議に思った野梨子が見上げると、清四郎もまた彼女を見つめていた。
その顔はさっきまでのすかした態度とは反対に、いつになく素直な少年めいていた。清四郎はふっと息をつくと、やっと一日終わりました、とまるで独り言のように呟いた。
「長い一日でしたよ。まるで、なかなか目的地に着けなくて、同じ場所をぐるぐる巡る夢を見ている様でした」
清四郎の台詞は、盛大な可憐の声に掻き消されてよく聞き取れなかった。それでも野梨子は自分を見つめる清四郎の目に、彼の言った言葉を理解した。
野梨子はこの時ポーカーフェイスの裏で清四郎もまた彼女と同じように不安だったことを知った。
野梨子の口から憎まれ口はとうとう一言も出てこなかった。
清四郎の声を聞いて、体温を感じて、その目を見つめているうちに、野梨子の気持ちは自分でも驚くほど静かに凪いでしまっていた。
暗闇に取り残された恐怖も、もう会えないかもという不安も、それはもう魔法のように跡形もなく消えてしまった。清四郎が、ただそこにいるというだけのことで。
清四郎はそのまま野梨子を抱き上げた。野梨子は何も言わずに、清四郎の首筋に顔を埋めた。

27 :20万hit競作・Blue sky (7):04/05/13 23:11
怪我をしているわけでもないのに、こんなことをされたのは初めてだった。
少し恥ずかしくなって野梨子が顔を上げると、すぐ側に清四郎の顔があった。清四郎はボートを目指してまっすぐ前を向いていた。
よく見慣れた涼しい目元、少し大人っぽい顔立ち。
そしてその向こうには、夜明けの空が広がっていた。太陽が現れる少し前、空はまだ南国特有の濃密な雲も見当たらず、
すっきりと冴えた青色だった。

野梨子はその風景をとても綺麗だと思った。
あぁ、そうだ。どうして気がつかなかったんだろう。
この空は彼に似ている。

28 :20万hit競作・Blue sky (8):04/05/13 23:13
「……清四郎」それに気付いたとき涙が溢れてきた。
彼女の楽園をあんな言葉で打ち砕いた清四郎。それを恨みさえしていたはずなのに。
それでも彼女が安らげる場所は他になかった。
彼から逃れようとしながらも、心はこんなにも彼を求めている。
清四郎、恋しい。会いたい。
野梨子は清四郎を思って人目も憚らずに泣きつづけた。

気がつくと夜明けは終わり、海岸には明るい朝日が降り注いでいた。
まだ頬を伝う涙を拭いて、野梨子は立ち上がった。
帰ろう。
彼女の少女時代は終わったのだ。
これから少しづつ、私もみんなも変わっていくのだろう。
この感情を恋と呼ぶのか、愛と呼ぶのか、それとも錯覚と呼ぶのかはまだわからない。
けれど帰ろう。例え楽園が崩壊したとしても、私の帰る場所は彼のもとにしかないのだから。
今ごろ清四郎はひどく後悔しているだろう。
彼にちゃんと伝えないといけない。清四郎は悪くない。傷つけたのは私のほうだと。

29 :20万hit競作・Blue sky (9):04/05/13 23:16
ホームはけたたましい騒音に満ちていた。
「…もしもし、清四郎?」
「野梨子、今どこにいるんです?」
「今は遠見台という所ですわ。私、いま駅にいますの」
震えそうな声を押さえて、野梨子は丁寧に話しはじめた。
野梨子、みんな心配しています。そこまで言うと清四郎は言葉を切った。電話の向こうで彼が次の台詞を躊躇っているのがわかる。
「野梨子、僕は――」
清四郎がなにか謝罪や後悔の言葉を言いかけたその前に、野梨子はゆっくりとした口調で話し始めた。
「ごめんなさい。清四郎にも皆さんにも随分迷惑をかけましたわ。――今から帰ります。
私、清四郎にちゃんとお話ししたいことがありますの。夕方にはそちらに着きますから、清四郎、迎えにきてくださる?」
野梨子は詳しい到着時刻を告げると、電話を切り、列車に乗り込んだ。
列車が走りだすと視界が開けて窓の向こうには春の景色が広がっていた。
どうか、まだ間に合いますように。清四郎のいる場所まで続いている青空に向かって、野梨子はそっと小さく呟いた。

おわり

30 :20万hit競作・Blue sky (9):04/05/13 23:18
以上です。
なんとか9レスで終わることが出来ました。
どうもありがとうございました。

31 :名無し草:04/05/13 23:21
競作うpします。8レス程使います。

32 :20万hit競作・<蒼穹にて>(1):04/05/13 23:21
「わたくしには、心に決めた方がいます」


目の前の凛とした表情の彼女に、男は思わず息を呑んだ。
それは、言葉では言い尽くせぬほど美しく
強い意志で満ちていた。




+ + + + + +




その日の空合いは、初夏の季節を表すが如く、蒼穹だった。

白鹿・白菊両家の間で挙行された見合いは
彼女のひとことで、すでに何の意味も成さなくなっていた。

彼女は真の恋をしているのだ。男はそう確信した。
自らの入る隙間など、何処にもあるはずが無かった。

しかし、同時に男の心は些かの嫉妬と好奇心に掻き立てられていた。
知りたかった。白鹿家の後継者として
幼き頃から、世に溢れている穢れも知らず
慈しみ、育て上げられたであろう彼女の心に棲んでいる男の事を。

男がそう思った刹那。突然、襖の扉が開いた。

33 :20万hit競作・<蒼穹にて>(2):04/05/13 23:23
振り返ると、ひとりの青年が姿を現した。
金色の髪に、深く蒼い瞳。
体にはぴったりとした蒼い袴を纏っている。


そんな彼の姿に、両家は一時騒然となった。
彼女の両親などは、予想もつかなかった人物の姿に
信じられぬと言った表情で、青年の姿を呆然と見つていた。


男は青年を見て、思わず感嘆の声を上げた。
白菊家は、古くから大使として
さまざまな国へ赴いている家柄であり
男自身も、多くの外国人と接する機会はあったが
こんなにも綺麗な客人に会うことなど無いに等しかった。

彼女はその青年の姿を見つけると、
心から安堵したような表情で
白百合のごとく穏やかな笑みを浮かべた。

男は思った。
彼こそ、彼女が心に決めた相手ではないだろうかと。

ふと青年が男の方を見た。

「こんにちは」

青年は流暢な日本語でそう挨拶すると、にっこり微笑んだ。
しかし、その蒼い瞳は水神のごとく挑戦的な色で満ちていた。

34 :20万hit競作・<蒼穹にて>(2):04/05/13 23:24

「美童・グランマニエです。彼女・・・野梨子とは
聖プレジデント時代からの同級生でした」

彼はその美しい容姿に勝るとも劣らない、
テノール調の声でそう自己紹介をした。


両家の視線は、彼女と彼女の隣に座る彼の姿に集まっていた。
彼の隣に座っている彼女も自分達に注がれる視線に
思わず顔を強ばらせた。

彼は、そんな彼女の肩に優しく手を差し伸べた。
刹那、彼女の硬くなっていた表情は軟らかいものに変化した。

そして、目の前を真っ直ぐに見据えると
穏やかそうな彼女にしては少し強い口調でこう言った。


「わたくしは、彼・・・美童と白鹿流を継承します」


そう言い放った彼女の表情は、凛として美しかった。

35 :20万hit競作・<蒼穹にて>(4):04/05/13 23:25
最初に立ち上がったのは、野梨子の父・清州だった。
清州は、決心の色に満ちた娘の表情を
しばし黙って見つめていた。

(それは本当なのか?どんな障害があったとしても
己の想いを貫く覚悟があるのか?)

野梨子は、そんな父の無言の問いにも
先程の表情を崩すことは無かった。
彼女の母も、見合い相手である男の両親も
そんな親子のやりとりに固唾を呑んで見守っていた。
彼・・・美童を除いては。


沈黙を破ったのは、父の方だった。




「美童くん、君はどうなんだね?」




美童は清州の方に顔を向けると、静かに口を開いた。
男は思わず息を呑んだ。

36 :20万hit競作・<蒼穹にて>(5):04/05/13 23:26
「僕・・・いえ私も野梨子と同じ気持ちです。彼女の想いと共に
彼女を、そして白鹿流を守っていきます。
死がふたりを分かつまで・・・」


美童の心には一寸の迷いも無かった。
目の前にあるのは、これから彼女と歩むべき、
ただ一本の道だけであった。

男は、美童の表情に並々ならぬ気迫を感じていた。
それは、彼の蒼い瞳に吸い寄せられそうになる程だった。


「野梨子、美童くん。そこまでの覚悟が出来ているのなら
お前達の好きにしなさい。私はもう何も言わんよ。
「父様?」
「・・・・・野梨子、幸せになりなさい」


清州は美童の話を黙って聞いていたが
そう一言呟くと、白鹿夫人が止めるのも聞かず
見合いの席を後にした。

その後、白鹿夫人の機転もあり、両家の見合いは白紙になった。
しかし、男の心は蒼穹のように澄んでいた。



それから3ヶ月後。

白鹿家では、婚礼の義が滞り無く行われた。
その日の空も、蒼く澄んでいた。

37 :20万hit競作・<蒼穹にて>(7):04/05/13 23:28
「のりこ、野梨子」


自分を名を呼ぶ声に、野梨子はふと我に返った。
目の前には青い海が広がっている。

「野梨子、どうしたの?気分でも悪くなった?」

今は夫となった男の心配そうな表情を見つめながら
野梨子は静かに首を振った。


「・・・思い出していましたの」
「何を?」
「私と貴方が、本当の夫婦になった日のことですわ」
「そっか。あれから1年も経ったんだね。
魅録と悠理が結婚するくらいだもんなぁ。
清四郎も僕みたいにさっさと決めればいいのに
何やってんだろ?」
「ほんと、美童の言う通りですわ」



野梨子はそう言って微笑んだ。

美童はそんな妻の美しい横顔を眺めながら、
時の流れの速さを実感していた。

今では妻となった彼女の凛とした表情が
まるで、昨日のことのように思い出される。

38 :20万hit競作・<蒼穹にて>(8):04/05/13 23:30
美童はふと思い出したように呟いた。


「ところで、野梨子。話って何なの?君の方から旅行しようって
言ったのは珍しいなぁとは思ったけど」
「ごめんなさい。もう少し時期が来たらお話することにしますわ」

野梨子の意味深な一言に、美童は暫く考え込んでいたが
答えは容易に見つかった。彼女の様子がおかしかったのも
これで納得が出来るというものだ。


「野梨子!」
「・・・名前は美童が決めて下さいませんか?」
「ふたりの子供なんだし、ふたりで決めようよ」
「ふふっ。そうですわね」

ふたりは顔を見合わせて笑った。


目の前には蒼い海と蒼い空。

そして、これから先、歩んでいくだろう
険しく長い道には、決して変えようのない、
決して揺らぐことのない幸せで満ちている。

そう確信していた。


THE END

39 :名無し草:04/05/13 23:33
オワリです。こちらにアップするのは久々になります。
感想&アドバイスを下さった方々、本当にありがとうございました。
皆様のご意見を元に、これからも精進していく所存でいます。

ありがとうございました。

40 :名無し草:04/05/13 23:53
もう競作週間も終わりですね・・・。サビシイ

>I wish…
愛らしくも小粋な野梨子と可憐のお話でしたね。
ただの甘口テイストではないところがいいです〜。
可憐編もあれで美童にコロッと行ったら「あれ?」ですが
ガータートスとは憎いですね!

>Blue sky
愛を告げられてショックの余り放浪する野梨子ですが
実は清四郎のことは気になっていたわけですね。
ご無事で何よりです。

>蒼穹にて
男にも綺麗と言われてしまう美童。やっぱり綺麗なんだろうなあ〜
三部作の最後(ですよね?)ですが、時間的には一番最初なんですね。
男たちの中で一番最初に決めるとは美童、やるじゃん!

41 :名無し草:04/05/13 23:54
あー、ごめんなさい。やってしまいました。
sageます。

42 :名無し草:04/05/14 00:10
>蒼穹にて
あれ? (6)がdでませんか?
勘違いだったらごめんなさい。

>41
sageを入れても、スレがそこから上には行かないだけで、
下がる訳ではないですよん。

43 :◆F/MOUSOU1Q :04/05/14 01:05
競作を思う存分楽しませていただきました。
作者さん、絵師さん、ありがとうございました。住人の皆さんも、
お疲れさまでした。

早速、競作作品をSSとイラストとに分けてまとめました。
S S  http://houka5.com/yuukan/short/compete/s20-334.html
イラスト http://houka5.com/yuukan/illust/k01.html
短編目次・イラスト目次・更新履歴などからも行けます。


>競作に参加した作者さん・絵師さん
作品の一覧表をまとめるにあたり、タイトルの後ろの( )内に
カップリングなどの作品説明を入れてみました。
作者さん・絵師さんの意向に沿わない場合もあるかもしれませんので、
その場合は下記のスレかメールで代替案をお知らせくださいませ。

誤字・脱字 修正受付スレッド
http://jbbs.shitaraba.com/movie/bbs/read.cgi?KEY=1027901461&BBS=1322

なお、タイトルのミスや誤字などを本スレで訂正されていた方、
気にされていた方の分は直しておきました。他にも直したい部分が
ありましたら、上記のスレかメールでお知らせください。


>先ほどメールをくださった方
サイズを直しました。
こちらこそ、うっかりしていて申し訳ありませんでした(汗

31 KB
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

read.cgi ver 05.02.02 2014/06/23 Mango Mangüé ★
FOX ★ DSO(Dynamic Shared Object)